りゅうぎん紅型デザインコンテスト
沖縄県の伝統工芸の一つである紅型の振興と若手工芸家の育成ならびに紅型デザインの新しい領域を追求していくことを目的に、「りゅうぎん紅型デザインコンテスト」を毎年開催しています。応募作品は展示会で発表するとともに、入賞作品については当行のカレンダーや通帳、広報物などに広く活用しています。
※りゅうぎん紅型デザイン公募展は、第17回(平成20年)より、りゅうぎん紅型デザインコンテストに名称を変更しています。
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一般枠
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出発 【1024×768】【1280×800】 |
ホロホローの森から 【1024×768】【1280×800】 |
朝にめざめろ 【1024×768】【1280×800】 |
Rある探検 【1024×768】【1280×800】 |
夏の日のおすそわけ 【1024×768】【1280×800】 |
未来枠 ※A2サイズとなります
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月を想ふ 【1024×768】 【1280×800】 |
鞠面下 【1024×768】 【1280×800】 |
捕食 【1024×768】 【1280×800】 |
審査総評
- ■一般枠 宇良京子氏(県立芸大工芸専攻染分野講師)
大賞とデザイン賞の2点は作者の実感を通し、新しい表現に臨む作品が選出された。拮抗した審査での奨励賞2点は作品の装丁の隅々まで細やかに心を配り、ものづくりに携わる大切な素養を感じた。
大賞「出発」平良 紗矢野 2度の奨励賞受賞、昨年度の技術賞受賞に続き初の大賞受賞となった。決して器用ではない仕事が、作者の実感をひたむきにつなぎ表現へと至る。たくさんの思いを詰め込むあまり、画面に抜ける間が欲しいが、出発の旅路に刻々と移りゆく景色をとどめ、雲に重ねるさまざまなイメージを手放さず、細やかに形をつかみ、重ね、つなぐ表現に目を見張る。今後もひたむきに制作に向き合い研さんを重ね行く仕事に期待する。
技術賞「ホロホローの森から」千葉 聖美 ヤブニッケイがフレームとなりさまざまな植生の植物をつなぎ、海に広がる景色へと見る人の目を素直に導く。最終審査に至るまで作品面から色料の厚みや強さが伝わってきたが、じっと実作品と対峙していると全ての色がフラットに目に映る。ポスターなどさまざまな広告物へと反映する効果に配慮した堅実な仕事である。色料の素材への接着と定着のバランスの難しさは顔料を色材とする実制作者にとって仕事への深い理解が求められるものとなる。
デザイン賞「朝にめざめろ」崎村 歩未 サガリバナが静かに花開く一夜から、朝の光を浴び躍動する生命のきらめき。植物や赤瓦の屋根が踊り、コウモリが朝と夜とを渡りつなぐ。特に、黄金色に輝く色面に一見溶け込んだかのように見え隠れする、葉先の細やかな色彩表現は、作者の感受したイメージを丁寧な仕事によって表現され支えている。気持ちが走る仕事の後ろには、しっかり紅型を見据えくみ取ろうとする意志が感じられる。今後の展開に期待が高まる。
奨励賞「Rある探検」佐喜眞 沙更 宙を泳ぐクジラの躍動感と光のさらなる広がりを求め糊跡のストロークを重ねている点や、特にRに潜在する自然界の、あらゆる情景と躍動を細やかに表現している点に、意欲的に制作に向き合う姿勢を感じる。豊かな自然に囲まれた、緑の丸い色面は、構成要素として重要な空間となるが、平板な表現となった。白抜きで模様を配置する意図をくみ取れるが、作者が文様をたどる中に形への深い考察と造形への理解が伴うとさらに力強い作品になると思う。
奨励賞「夏の日のおすそわけ」上江田 美希 昼とも夜ともつかない幻想的な空気をまとい物語へと優しく誘われる。その作品の背景に構成と仕事の組み立ての確かさ、そして日々の仕事に丁寧に向き合うその積み重ねをみる。透明感を抱かせる作品はそういった日々の志に支えられているのだと思う。物語のキャラクターに穏やかな情景を重ね心温かくなるが、物語が物語として完結しているがゆえ表現の幅を狭めていることが惜しい。
【2024年8月23日付 琉球新報掲載】
- ■未来枠 宮城守男氏(琉球びんがた事業協同組合理事長)
優秀賞「月を想ふ」福山 遥深 なじみのモチーフを大胆かつ巧みに配した絵画的な作品。渦巻く海流の躍動感と、画面を占める青と白が、遠目にも美しい。筒引きの技法か、散見する不安定なエッジは、技術的にはネガティブに取られがちだが、この作品では海中のゆらめきとも取れて面白い。狙ったことだろうか。海中からいちずに月を見上げるウミガメの構図と瞳が印象的で、作者が今後挑む新世界への期待と意欲が感じられ、鑑賞者も隣で一緒に見ているような錯覚に陥る。ハワイでウミガメは守り神・幸運の使者。未来への寿ぎの作品にも感じられた。
優良賞「鞠面下」本村 由奈 シンプルなように見えて実は、鞠・金魚・水草を染めて糊を落とした後、再度水面を染め重ね(重ね型)、奥行きを表した手の込んだ作品。水面の糊置きは型紙でなく筒引きで行いエッジを柔らかくしたり、水草に水色を重ね奥行きを出したり、表現に合わせて技法を選ぶ工夫が感じられた。水面のにじみも意図したものではないだろうが表現として面白い。金魚の濃い影は夏の強い日差しを連想させ、水の涼感を増している。風鈴の音まで聞こえてきそうな、見る者の五感をくすぐる作品になっている。
審査員特別賞「捕食」眞喜屋 心愛 型紙の鋭利な彫り線と、白と濃紺の強いコントラストが目に刺さる作品。作者の内なる複雑な思いが見る者にも訴えかけてくるようである。一見、抽象表現のようだが、よく見るとカワハギを狙うタコ、貝を食らうウミガメなどタイトル通りの厳しい弱肉強食のリアルが展開している。隠し文字や祈る人など、今の世界情勢にも思いをはせているのだろう。なじみ深い「美ら海」の表現とは一線を画した「海」表現に、紅型で挑戦した心意気が新鮮であった。
全体的にモチーフが似通ってきている傾向がある中、今回受賞した3作品は、技術的にはまだ甘くも、表現に合わせた技法を模索し、三者三様に面白い作品になっていた。また、受賞は逃したものの技術的に確かな作品も見られ、紅型の未来が頼もしく感じたことも申し添えたい。多くのものに触れ、さらに感性を磨き、今後も自由な発想で作品づくりに挑んでほしい。
【2024年8月23日付 琉球新報掲載】
デザイン意図(一般枠)
- 大賞「 出発」
飛行機が飛び立ち、だんだん遠ざかっていく街並み。コバルトブルーの海が広がり、サンゴ礁がジンベエザメに見えたり雲の形が生き物に見えたりと想像しているとあっという間に目的地に着きます。旅のはじまりのワクワクや楽しさ、美しい景色を作品に込めました。
- 技術賞「ホロホローの森から」
八重瀬町南部のホロホロ―の森に生育する植物とグンバイヒルガオが広がる具志頭浜をモチーフにデザインしました。
- デザイン賞「朝にめざめろ」
「がんばるぞ」と意気込む1日の始まりを表現しました。早朝は首里によくいます。そのとき、夜から朝にかけて雰囲気が変化するのがとても好きです。そんな朝の始まりをイメージする配色にしました。
- 奨励賞「Rある探検」
沖縄にはたくさんの魅力的な動物や植物がいます。魅力が詰まった沖縄で、いろんな生き物を探してみよう!そこになにがR(アール)かな?沖縄の魅力的な生物や植物を、りゅうぎんのRとともに表しました。
- 奨励賞「夏の日のおすそわけ」
大きなガジュマルの住人たちの日常からうまれる物語を想像し、沖縄の夏の風景として表現しました。
デザイン意図(未来枠)
- 優秀賞「月を想ふ」
ウミガメが月を見ている意図は、明日や未来を楽しみに待ち焦がれているという様子を未来永劫という意味を込めてデザインをしました。
- 優良賞「鞠面下」
まりの柄を一番前にもってきてその下に水草・金魚をおくことで立体感を出しました。
- 審査員特別賞「捕食」
弱肉強食の現代社会を表現しました。